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2010. 07. 28  
読み始めと、読み終わりとで、こんなにも違う感想を抱いたのは初めてだと思う。
この本が良かったととあるブログで見て、最初はそれに疑問だったのに、今はものすごくその記事に同意する。これは良いよ。好きだ。すぐに再読せずにいられなかった。再読しても泣きそうになる。いや、むしろ再読の方が泣きそうになる。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
(2010/01/15) 辻村 深月  商品詳細を見る
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
(2010/01/15) 辻村 深月  商品詳細を見る

昔は旅館だったという建物で共同生活を送るクリ―エーターの若者たち。それはトキワ荘のように。
家主であり、絶賛売出し中の脚本家・赤羽環。住人たちの中で一番を独走する、中高生に大人気の小説家・千代田公輝(チヨダ・コーキ、コウちゃん)、彼の敏腕担当編集者・黒木智志。マンガ家の卵・狩野壮太。映画監督の卵・長野正義。画家の卵・森永すみれ(スー)。環の一番古い親友・円屋伸一(エンヤ)が出て行ったあとに入居する加々美莉々亜。
コーキの小説のせいで人々が死んだと騒がれた事件から10年。お互いに刺激し合いながら暮らす彼らに訪れる変化。

初めてチャレンジする作家の本に、上下2巻の長編を選んだのは失敗だったかと思った。物語が大きく動き始めるまでは。でも違う。正義の「本当、この家退屈しねぇよ」という言葉通り。動き出した後は、これでもかって畳みかけられる感じ。う~ん、ヤラレタ。これは愛なのか? 優しさの物語であるのは確かだ。すれ違う優しさは読み返すと、たまらん…

序盤、環の性格が鬱陶しかった。けったいというか難儀というか、気難しいというか。緩く生きてる私には厳しく、激しすぎて、お近づきになるもの怖ろしい。好きじゃなかったし、絶対に友達になれないタイプだけど、それでも彼女の過去話には泣きそうになる。正直この話に出てくる女性は皆、そんなに好きじゃない。莉々亜は登場時から。スーも泣いて他人に頼る所が嫌いだ。ただね、環もスーもしっかりとした優しさを持っていて、そこは好きだ。
これは皆に言える事だけど、モノを創る事に真剣に向かい合う姿が良い。それぞれに悩んだり、傍から見てると賛同はできないやり方であっても、その道でやって行こう、これで世の中に訴えかけようという決意があり、芯がある。彼等は間違いなく全員、心意気は完璧にプロだ。

後半、環の過去が語られる時、それは読書が人に及ぼす影響についても大いに語っている。これはとても身近に感じられるテーマだった。環に比べりゃどうってことないけど、それでも狭い世界で希望が見えない暗黒期ってのは私にもあった。あの当時、私は本を読んでいたのだろうか? 何を支えに生きていたのだろう? 探せば日記もどきがどこかにあるはずだが、到底開こうとは思えない。蓋をしたい事柄だから。学校という自分のいる世界の閉鎖的な小ささとか、実行するかはともかく別の過ごし方もあったとか、後から悟るように気付いたのはいつだったろう。読書によってどこかで知っていても、本当に理解したのは結構後だったような気がする。アホやな…。これに影響を受けたって明確なものは思いつかないし、しんどい時期はあんまり読書していなかったのかもしれない。それでも読書による知識によって支えられた部分は大きいし、今も昔も読書が私の楽しみの大部分を占めているのは事実だ。賞味期限がある本ってのもあると思う、わかる。ただそうして期限が切れた後も、本を忘れ去るほど現実に興味を持てないままだよ。リア充にはなれないなぁ。

登場人物が多く、視点が混乱する。読んでて誰が誰について語っていたのか分からなくなる。最初にキャラを、彼らの相関を把握するまでは特に。でもそれは意図的なものなんじゃないだろうか。誰が何を知っているのか。読み終わった時にもう一度読み返さずにいられない。そして読み返すと笑ってしまうほど最初から、そうだったのか、と。住人達の内、数名は役者に転向すればいいよ、と思うw 嘘をつくのって私にはできないしなぁ、そういうのが得意な環とはそこでも合わない。言葉やしぐさの裏をどんだけ読みまくってるんだ……疲れないか? みんな繊細過ぎないか? クリエイターの感性ってこういうもの? 鈍感さに磨きをかけて生きて来た私には、何か次元が違う話が展開されてるように感じてた。再読したら慣れはするけど。これは作者の作風なの? ちょっと今までにない衝撃を受けた。読みながら理解が十分じゃないって事をつきつけられるなんて、あまり無い経験だ。それでも繊細さとは無縁な場所でも感動はする。人の心に失望したり希望を持ったり。優しさは泣ける。

以下、ネタバレのつぶやきは続きから。













本当の天使ちゃんを、自らの推理で突き止めたコウちゃん。彼らの接点は最初から分かりやすい伏線があって、それが明かされていくのは面白かった。だから余計に、もう本当に、彼らの擦れ違いって何なのかしら、ともどかしい。きっとコウちゃんはこの先も過去を明かさないのだろうな。環も高校時代の事については一生気付かないのかもしれない。既に環も自分が天使ちゃんであることはバレた事を知ってるかもしれないけど、それでも真実の「コーキの天使ちゃん」は永遠に名乗り出ない気がする。今後数十年、二人が仲良くやって行くとして、その関係はどこに落ちついたんだろうか。嘘吐きの多い話だけど、コウちゃんは自分が神永舞だと言った明らかな嘘以外は、嘘を吐いてないのよね。言ってない事は色々あるけれど。なんか読んでてすごく味があるというか、中身がきれいな人だ。ファンになるよw 鼓動の正体はわかりやすかったけど、本当の天使ちゃんを知ってるコウちゃんはどう思っていたのだろう。切ないなぁ。
狩野の視点の話も多いのだけど、こんな食わせ者はちょっと記憶にないよ。彼の「仕事」に私が気付いたのは正義がネタバレした時。神永舞が誰なのか?は、あんまり誰であるかを気にしてはいなかったのもあるけど、見事に騙されて、ちょっと口惜しい。読み返しても狩野は力いっぱい否定してるし。正義はどこで気付いたんだ? 桃花と付き合ってるってのも伏線って言える程の物はないよね? ほんとうに器用なヤツ。

追加:この作者、名前にトリックを入れる常習者らしいですが、これが初めてだった私はそれが理解できず(><) 正義がわかった風に言ってるけど、その意味が分からず、話の中でそこだけが意味不明でずっとモヤモヤ… 数週間後に再読した時には何故か瞬時に判明。だぁぁっ、遅っ! 狩野めっ(笑) 何が幹永舞=かんえいぶ=can able=可能=狩野だよっ!
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辻村深月  
Comment
No title
住人たちがたまらなく愛しくなる物語でしたね。
トラックバックさせていただきました。
>藍色さん
直後の再読時にも、しっかり読まずにいられない濃密さ。
ストイックさや優しさが詰まっている、良いお話でしたv
Trackback

スロウハイツの神様 辻村深月

小説を模倣した事件から十年。筆を折っていたチヨダ・コーキは見事復活し、 売れっ子脚本家・赤羽環たちとの幸せな共同生活をスタートさせた...
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雪下千里 (ゆきもとせんり)

Author:雪下千里 (ゆきもとせんり)
暇があれば本を手に取る。無くても手にとって寝不足でフラフラしてたり。
最近はアニメを見るのにハマリ気味。読書より時間を費やしているかも…

+*+*+*+好きな本+*+*+*+
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伊坂幸太郎
シリーズものとか長編好き。

+*+*+*+好きなDVD+*+*+*+
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ラピュタ>ナウシカ>もののけ>千尋…
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