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2009. 09. 28  
すごい、またすごい本に出会った。
週末はこの本に囚われて、使える時間は全部つぎ込んで、ほとんど徹夜で読みふけってました。
上橋さんの本を全部読んだわけじゃないけど、これ今のところマイベストオブ上橋さん。

獣の奏者 (3)探求編獣の奏者 (3)探求編
(2009/08/11)
上橋 菜穂子

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獣の奏者 (4)完結編獣の奏者 (4)完結編
(2009/08/11)
上橋 菜穂子

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前巻を先月読み、楽しみにしていた本。期待を裏切らない。

降臨の野(タハイ・アゼ)の出来事から11年後。夫となったイアルと8歳の息子ジェシと暮らすエリン。新たなる方向へ舵を切ったはずの国は未だ治まらず、内政は揺れ、外敵の脅威も増していた。
再び起こった闘蛇の大量死の原因を探る事になったエリン。それは闘蛇と王獣を更に深く知り、埋もれた歴史を探る事へと繋がっていく。数百年前の災厄の真相は何だったのか? 家族を守り、王獣を守ろうとするエリンの選択した道はどこへ至るのか。

何から述べればいいのだろう。言葉にならないものが胸の中にたくさんある。
「人々と獣たちの歴史の物語」だと作者は言う。それもあるんだけど、やっぱりこれは前回で未完となった「エリンの物語」と言えるだろう。エリンと、家族の物語だ。

なんかもう、エリン達の家族愛にちょっと打ちのめされた。母子・父子・夫婦、どれも双方向でしっかりと繋がれた絆。生き急がざるをえない事情を抱えたエリンとイアルだからこそかもしれない。「固い胡桃」というのが本当にピッタリだ。限りある事を覚悟した幸せだから強烈なのだろうか。
このお話だけに限らないけれど、人はどこまで他者を想えるのだろう。なんか自分が悲しくなってくる。
私はこのお話では、以前からエリンよりイアルが気になる。なのに3巻の中盤過ぎるまでエリンの「夫」としか出てこなくて、すごく焦らされた(笑) なんで、さっさと言ってくれないんだよぅ、と。いや、それまでの部分部分でイアル以外ありえないのは分かってるんだけど。
イアルの方が気になるのは、エリンよりわかりやすいからかな。彼の言動はだいたい抵抗なく心にスッと入ってくる感じ。エリンは集中すると周りが見えなくなるタイプ、王獣バカ、凄いけどついていけない、置いていかれる感じがある。ジェシの寂しさももっともだ。生意気でおしゃべりなジェシは誰に似たんだと言われていたけど、彼の両親だって生い立ちが変わってればもっとおしゃべりだったんじゃないだろうか。ジェシがこういう子に育ってるってのが、彼らの幸せの象徴だと思う。
イアルとジェシ、エリン、逃走と救出は「守り人」を思い出させる。父子の逃避行は特にバルサとチャグムを思い出す。状況や立場が違うから「守り人」のようにはいかないけれど。イアルが好きな理由はこの辺にもあるかもしれない。

この本で心底感心したのは、上橋さんの観察者としての目だ。ストーリーが秀逸なのは置いといて、特筆すべきは日常の何気ない場面の表現。前々から食事の場面がやたら美味しそうで、目に浮かび香りすら想像出来るような描写は特徴的だったけれど。それに加え、父と母と子どもの遣り取りが普通で、そのナチュラルさが素晴らしい。日常に紛れ、過ぎゆくものを逃さずしっかりと捉えている。エリン一家の温もりが、これでもかってくらい感じられる。

次第に明らかになる闘蛇と王獣の生態ってのは、現実に即してるなと思った。わかりやすい。あぁ、いるねー、そういう特徴の生物、と。はっきり覚えてはいないけれど、子供の時に読んだシートン動物記とかファーブル昆虫記とかが頭をよぎる。

しかしエリンとイアルが下した転換とも言える決断はどうだったんだろう。
正直読んでいて、えぇっ!?そっちを選ぶの? って思った。権力者からは逃れようがないから、諦めるしかなかったのか…。だけど結局どっちも命懸けじゃないか。目次に目を通した時から、私は否定された方の道を行くんだとばかり思ってたよ。
同時にあったイアルの申し出にも、エリン同様、心底止めてくれって思った。
儘ならぬ世界。巻き込まれたものがあまりに大きくて、家族の幸せという単純で根源的な願いすら叶えられない。急流に翻弄される木の葉のようで、それが辛い。
読み終わった後にも、ずーっと、つらつらと考えていた。他の道って無かったのかなって。でも私じゃ無理、いずれ潰える道しか思いつかない。彼女がエリンであるが故に選んだ道なのは理解する。ただ、それでもジェシやイアルの望んだ道は違った筈だし、王獣に纏わる諸々を切り捨てられたなら別の道もあったろう。だが、そういう選択をしないのがエリンなので、遣る瀬無い。最後まで読むと、冒頭の「イアルの手記」が重い。降臨の野でのリランの姿がエリンのその後を決定づけ、縛りつけた。

もしも、過去の悲劇の真実をを知ってたら、それは生かされただろうか? 知識の伝達が滞らずに行われていたら? エリンだけでなく、知っているべき者達がちゃんと知っていたら、事情は変わっただろう。でも、一子相伝なんてやってたら、途切れるのは当たり前だ。災いであろうと、それを見届け、多くの人に見せようとしたエリンは正しいと思う。知ることの重要性。知識欲は人間の強い欲求だ。権力者は民衆を操りやすいように、知識を独占し隠す。だけど、人が過ちを繰り返さないように、前に進んで行けるようにするには、それと反対の事をしなければならない。大人になったジェシの成した事はまさにそれだろう。エリンの想いも継ぎつつ。

1・2巻よりこの3・4巻の方がかなり好きだ。読むのをやめられない。魅力というか、魔力でもあるんじゃないかと思う。読み終わってしばらく経つと、落ち着いてきて悲しくなってくる。
表紙が良くできているな。この表紙だけ見ても結末の可能性予測がつくってのもちょっと悲しいけれど。

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プロフィール

雪下千里 (ゆきもとせんり)

Author:雪下千里 (ゆきもとせんり)
暇があれば本を手に取る。無くても手にとって寝不足でフラフラしてたり。
最近はアニメを見るのにハマリ気味。読書より時間を費やしているかも…

+*+*+*+好きな本+*+*+*+
上橋菜穂子「守り人」「獣の奏者」
小野不由美「十二国記」
田郁
荻原規子
伊坂幸太郎
シリーズものとか長編好き。

+*+*+*+好きなDVD+*+*+*+
「ショーシャンクの空に」
「アメリ」
「バタフライエフェクト」
「有頂天ホテル」
「運動靴と赤い金魚」
宮崎アニメだと
ラピュタ>ナウシカ>もののけ>千尋…
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